遠山由美 Yumi Tohyama

33の音をかく

 三十三間堂はなぜ、33なのだろう。この謎に迫るべく京都に滞在、室町蛸薬師の京都芸術センターを拠点に33日間、毎日ひと筋ずつ東西南北に範囲をひろげて歩いて周回してみた。  これまで手をつかって文字をかくことで、言葉に向きあい、言葉を反芻するように表現してきたが、今回は足をつかって歩くなかで聴こえた音を日々、33の円でかきとめる。意味をもとめずただ受けとめる。自分は土地への先入観が少なく、その場その時の動きはわりに素朴に反映された。  そのひとつひとつは断片的で、こぼれ落ちてしまいそうな些細なものにすぎない。言葉になる手前の、作為のない雑音の集積に耳をすましてその響きに身をゆだねる。33日間でおよそ352キロ歩いたが、33の答えは持ち越した。

’33の音をかく’ 個展 会場風景

’33の音をかく’ 個展 会場風景

同時代ギャラリー(京都)

2021

photo: Kai Maetani

地図 (京都) : 足でかく

地図 (京都) : 足でかく

gold leaf, sticker, inkjet, paper

A1

2021

1~33日/ 歩行距離合計 352km

左岸の雨

左岸の雨

sumi, watercolour, oil pastel, pater on paper

410x310mm

2021

14日目/ 歩行距離 15.2km/ 鴨川左岸

時間と情念の流れおちるところ

時間と情念の流れおちるところ

sumi, collage on paper

283x383mm

2021

3日目/ 歩行距離 8.1km/ 六角堂

梵音:終わりなき道

梵音:終わりなき道

sumi, acrylic, gold leaf, paper, frame

360×260x40mm

2021

33日目/ 歩行距離 14.3km/ 青蓮院親鸞聖人得度の間

音のスケッチ-2 -京都 諸行無常の響

音のスケッチ-2 -京都 諸行無常の響

sumi, gold leaf, paper

760x570mm

2021

’33の音をかく’ 個展 会場風景

’33の音をかく’ 個展 会場風景

同時代ギャラリー(京都)

2021

photo: Kai Maetani

Cosmic Ego / 自我からの解放をめざして

長野県北部で二拠点生活を始め、自然に近い環境ですごした6年間の終わりに取り組んだ Cosmic Egoシリーズ。かいてある言葉はego一つだが、無数回くりかえしかいている。惑星のように大きいエゴからゴミみたいに小さいエゴ、独占するエゴ、追従するエゴ、飛び降りるエゴ、ニヤリと笑うエゴ・・叩いても逃げても際限なく湧き上がるegoたち。

Cosmic Ego-4

Cosmic Ego-4

sumi, acrylic, oil, mixed media on canvas

1600x1300mm

2021

Cosmic Ego -square

Cosmic Ego -square

sumi, acrylic, oil, mixed media on canvas

45 x 45 cm

2019

Cosmic Ego- 1, 3

Cosmic Ego- 1, 3

sumi, acrylic, oil, mixed media on canvas

130 x 324 cm

2019

Drawing & Painting

家:家族を孕んで深い呼吸を繰り返す

家:家族を孕んで深い呼吸を繰り返す

acrylic, ink, oil on paper

410x310mm

2019

Strawberry Mama

Strawberry Mama

acrylic on canvas

2017

わたしがわたしであるために

わたしがわたしであるために

acrylic, oil on canvas

14×18 cm

2017

Between You and Me

You / Me – 生成の過程

You / Me – 生成の過程

acrylic on canvas

90×90cm

2018

You / Me – 3

You / Me – 3

acrylic on canvas

53×53cm

2017

イザナミの月

イザナミの月

acrylic on canvas

41×31.8cm

2018

You / Me –

You / Me –

acrylic, clay, mixed media on canvas

27×27cm

2018

羅針盤 / Compass 

生まれ育ち拠点としてきた東京を離れ、縁もゆかりもない長野県北部に月の半分ほど一人 滞在しはじめたころ、 長野の土をまぜこんで東/西、南/北を Non Dual Letter でかいたもの。省察に先立って、旅人が夜空を見上げて北を知る星のように、GPSがきかないところを歩くための羅針盤をつくり、部屋の片隅においていた。四方位が中心から広がり出ている構図。中心には小さな穴がある。観る人の心がそこを通って表と裏、こちらとあちらの行き来ができるようになっている。

羅針盤 – 身土不二

羅針盤 – 身土不二

90×90cm

2016

羅針盤 – 霧露のふち

羅針盤 – 霧露のふち

2016

羅針盤 / the compass

羅針盤 / the compass

16×16×8cm

2016

Non-Dual Letter

 Dual Letterを介して外の世界を自分の内に取り込もうとしてきたが、この時期、視点が内面へとシフトし始める。そして2007年ごろから取り組んだNon Dual Letter では、図と地それぞれに言葉を対置して、実際そこには書かれていない三つ目の言葉をあぶり出そうと試みる。裏と表の間の境界上にあって、どちらでもなくどちらでもある領域をnon dualと表現している。

past / future : いま NOW

past / future : いま NOW

silkscreen print ed.33

57×76.5cm

2015

in / out : ここ HERE

in / out : ここ HERE

sumi-ink on paper

65.5×86.5cm

2009

in / out : ここ HERE -black

in / out : ここ HERE -black

silkscreen print ed.33

45.5×57cm

2015

ma / pa : わたくし ME

ma / pa : わたくし ME

sumi-ink on embossed paper

2014

sun / moon : eclipse

sun / moon : eclipse

sumi-ink on paper

2009

oil / water

oil / water

sumi-ink on paper

57×76.5cm

2014

まるいこだま / Kodama

 今、この瞬間も地球は時速1,700kmもの超高速で自転しながら、時速10万kmで太陽の周りを移動していて、体の中では数千万個の細胞が死んでは再生しているらしい。ひとつ間違えば明日は来ないこの世界の日常とは、非日常の連続だ。3.11の震災をきっかけに”ありがとう”の言葉について考えたが、日本人は、「ありがとう=在り難う=”在る”ってのはかなり難しいことなんです」と言って謝意を伝える。これは海外のthank you やmerci、謝謝とは少し違ったニュアンスで、祈りであり真理の言葉なのではないかと思い至り、”ありがとう”を両面文字でエコーのようにかいたもの。

まるいこだま – ユングの眼鏡

まるいこだま – ユングの眼鏡

墨、アクリル、金箔、樹脂、木板 sumi-ink, acrylic, gold leaf, resin, wooden board

2011

まるいこだま

まるいこだま

墨、アクリル、金箔、木板  sumi-ink, acrylic, gold leaf, wooden board

20×20×1cm

2011

Hohuri

人と人の間をつなぐ言葉をかたちにしたシリーズ ”祝(ほふり)”。贈る心をのせる依り代として、あるいは自身の護符として、両面文字で書きあげています。自利利他の実践としても。

御礼Gavin

御礼Gavin

紙、墨、グワッシュ

53 x 53 cm

社長退任にあたり7か国の支社長からの感謝の気持ちを託した作品

結婚祝 彩生&Johathan

結婚祝 彩生&Johathan

アルシュ紙、墨、グワッシュ(アクリル額装)

156x156x45mm

2022

月のうさぎ / Moon Rabbit

両面文字でかいた「月のうさぎ」シリーズ。自分を食べてくださいと、火の中に飛び込んだうさぎはお釈迦様の前世の姿。うさぎの棲む月は、太陽と違って自ら輝かない。日をうけて輝く月の光と影、そのどちらも月の一部なのだった。

Moon Rabbit / Golden Full Moon

Moon Rabbit / Golden Full Moon

墨、金箔、樹脂、木板 sumi-ink, gold leaf, resin, wooden board

20×20×1cm

2006

Moon Rabbit / Bluel Moon

Moon Rabbit / Bluel Moon

墨、アクリル、ミクストメディア、ガラス、樹脂、木板 sumi-ink,acrylic, mixed media, glass, resin, wooden board

20×20×1.2cm

2006

Heart Sutra

9.11への鎮魂の意をこめてDual Letterでかいた般若心経Heart Sutra。

Heart Sutra / cracking

Heart Sutra / cracking

墨、アクリル、樹脂, 木板 sumi-ink, acrylic, resin, wooden board

20×21cm

2003

銀座松屋で東日本大震災直後に行われたチャリティイベントのシンボルイメージとなった。

Heart Sutra / screw-3

Heart Sutra / screw-3

墨、アクリル、樹脂, 木板 sumi-ink, acrylic, resin, wooden board

36.5×27cm

2003

Dual Letter / 両面文字

両面文字 Dual Letter とは、日本語と英語表記を分解し、同義のアルファベットで再構築した、いわば日本語と英語どちらでも読める文字である。西洋のカリグラフィを学んだが、日本の和歌や古典をアルファベットで表記すると印象が変わる。元のリズムや響きを損なわずに書くことは可能だろうかと考え始め、東洋の書を学ぶなかで、二つの言語の間に両面文字Dual Letterがうまれた。枕草子、般若心経、そのほかさまざまな書物を両面文字に翻字して作品化している。

Dual Text / Ductus

Dual Text / Ductus

silkscreen, ed.45

76.5×57cm

2001

枕草子 / Pillow Book-L

枕草子 / Pillow Book-L

墨、アクリル、キャンバス

213×280cm

2001

Bronze Letter-枕草子

Bronze Letter-枕草子

水彩、ミクストメディア、紙

14×18cm

2001

東京23区 / Tokyo 23 wards-L

東京23区 / Tokyo 23 wards-L

墨、アクリル、キャンバス

145×107cm

1999

枕草子 / The Pillow Book-blottering-S

枕草子 / The Pillow Book-blottering-S

墨、アクリル、紙

14×18cm

1998

Soba / Salaryman

Soba / Salaryman

墨、インクジェット、紙

20×20cm

2002

The Pillow Book / Amime

The Pillow Book / Amime

silkscreen, ed.44

76.5×57cm

2001

2001年9月にユナイテッド航空の機内誌表紙に掲載されていた作品。

Nightingale

Nightingale

silkscreen, ed.30

76.5×57cm

2006

アンデルセン『ナイチンゲール』, text from "Nightingale" Hans Christian Andersen.

Devils-1

Devils-1

silkscreen, ed.30

76.5×57cm

2006

ドストエフスキー『悪霊』, text from "Devils" Dostoevsky.

草枕 / The Three Cornered World

草枕 / The Three Cornered World

墨、オイルパステル、紙

113x1650cm

2008

Bones

Oracle Bone

Oracle Bone

彫込み朱墨、牛骨

35x22x7cm

2000

狂牛病 / Mad Cow Desease

狂牛病 / Mad Cow Desease

彫込み朱墨、牛骨

25×5×5cm

2001